2021/09/09

全国に点在する身近な「限界集落」について解説します。

今回は「限界集落」についてのお話です。「限界集落」と言われてもピンと来ない方、なんとなく意味は知っているけど詳しくは分からないという方が多いかもしれません。「限界集落」を見る機会が少ないため、多くの人に認知が広がらないのは現実として仕方ないことだと思います。しかし、北海道夕張市が2007年に財政破綻したように集落機能の維持が危ぶまれる自治体はこの20年で急増しており、私たちの生活とも身近な話になってきています。今日はそんな「限界集落」についての理解を深め、生活について考える機会にしていただけたら幸いです。

限界集落とは

限界集落とは、いわゆる田舎にある高齢者世帯が集中した地域を指しています。人口のうち高齢者が大部分を占めているためインフラが維持できず、不便性や孤立化が問題となっています。このことは、少子高齢化が進む現代の日本で今後重大化する課題として知られています。


限界集落を具体的に定義すると、65歳以上の人口が地域の50%以上を占める状態で、社会的共同生活や集落の維持が困難になりつつある地域ということができます。公共機関や病院、物流などが滞っていたり全く機能していない状態であることも特徴です。


つまり、限界集落は高齢化と過疎化で社会的共同生活を送るのが困難な地域であり、救済が必要になる孤立社会であるということです。

限界集落が生まれる原因 

限界集落が生まれる主な要因として、産業の衰退し働く場所がなくなることと、少子高齢化により生産人口が少なくなることが挙げられます。


全国の地方では、様々な産業が衰退しており少子高齢化も進んでいることが問題です。働く場がなく、子供が育てにくい環境であるため、若者が集落を出ていく状況が続いています。 一方で、医療の発達による平均寿命の延びや、結婚しない若者も増えていることを背景に、「死なない・生まない」という状況が全国的にな傾向としてあり、少子高齢化が加速化しています。


近年では、限界集落はもはや郊外の問題だけではなく、都市部にも類似現象が見られるようになってきました。 一例として、戦後の東京都内の団地の原点とも称された新宿区の戸山団地は住民の高齢化と建物の老朽化が進み、すでに限界集落として指定されています。このように、今後は全国の主要都市でも同様の現象が見られることも予想されます。

限界集落が抱える問題点

限界集落として地域の自治機能が低下してしまうことで様々な問題が出てきます。その中でも、特に重大なものを3つご紹介します。

1.生活インフラの維持が困難に

限界集落では、住民が利用するインフラの維持が困難となります。高齢化し、人が少なくなった土地では当たり前にあるべきものが利用しづらい・利用できないという問題が発生します。

例えば、スーパーや交通の便という日常的なものから、病院や福祉など住民の健康に関わる部分も損なわれる可能性があります。さらに物流が悪いという面から、郵便や食料なども届きにくい集落も。たとえ、農林水産業が盛んな地域だったとしても、高齢化が進むと地域の自給自足も困難になってしまうでしょう。

このようにインフラが衰退してしまうと、本来享受できるはずの社会的な生活が損なわれてしまうという問題があります。

2.災害リスクの増加 

高齢化でその土地の様々な担い手がいなくなれば、災害リスクも増加することも問題です。例えば土地を管理する人がいなくなれば、豪雨の影響による土砂崩れを予防するのも難しくなります。さらには災害時に住民を誘導したり、危険を伝えることが遅れてしまう可能性もあります。

このように、人がいないことで事前に避けられるかもしれない危険を予防できないというリスクは少なからずどの限界集落にもあります。

3.超高齢化社会特有の問題

高齢化が進む社会では「孤独死」が発生しやすくなります。2020年の東京都では5,513件の孤独死が発生し、発生件数は年々多くなっています。限界集落では、こうした孤独死をなくすための安否確認や見守りサービスが提供されにくくなります。

見守りサービスには費用がかかり、自治体が予算を確保できなければ、高齢者本人や家族が自ら費用負担することになることから、サービス対象者が広がらず、結果として「孤独死」が発生しやすくなっています。

自治体の取り組み 

限界集落を生み出す要因と抱えるリスクについて説明しましたが、自治機能を維持していくためには限界集落の原因となる人口と経済の懸念への対策を行っていくことが基本となります。現在、土地の生活を守るために対策に乗り出す自治体が多くありますので、自治体が進めている取り組みの一例をご紹介します。

コンパクトシティ構想 

経済圏を囲んでドーナツ化した生活エリアで過疎化が進んだ場合、過疎地域等では産業・福祉・買い物などの生活を支えるコミュニティ機能の維持が困難となり、地域社会の担い手が不足するなど、地域活力の低下が懸念されます。そこで、人の暮らすエリアを小さくまとめ、インフラや行政サービスの効率的な提供や経済圏の集中による活性化を図る目的があります。

また、コンパクトシティにより公共交通機関で自由に移動できる町を作ることで、自動車を利用する人の数が減りCO2排出量が下がるといったメリットや、青森市では除雪費用といった生活を支える公費の削減の効果が確認されました。

観光資源としての活用

集落ならではの、静かで「何もない時間」を活かして観光産業を打ち出す地域もあります。兵庫県丹波篠山市にある丸山地区では、集落内にある築150年以上の古民家を宿泊施設に改装し、「集落丸山」として開業すると、首都圏や京阪神、外国人観光客からも人気の観光地となりました。古民家宿は村人によって運営されていて、観光客もひとりの村人としての生活を体験できるようなイベントもあります。

企業誘致 

地方自治体がその地域に企業誘致を行うことによって、地域の雇用や人口を増やすことができ、直接的な地域活性化になります。地元の雇用環境の改善、人口流入や関連事業への経済効果による地域の活性化が期待できるため、優遇措置など企業とってメリットのある条件を提示しながら、企業誘致を積極的に進める自治体も多いです。しかしながら、交通の便利さなど企業が求める条件に満たない土地では成果を出すことは難しいでしょう。
▷こちらの記事で詳しく紹介しています。

地域おこし協力隊の任命 

『地域おこし協力隊』とは…働き地方自治体が都市地域からの移住者を『地域おこし協力隊』として任命し、農業・漁業への従事、地域の魅力PR、お祭りやイベントの運営など、様々な地域協力活動をしてもらいながら地域に定着してもらおうとする取り組みです。各自治体が独自に協力隊の任命を行っています。
▷こちらの記事で詳しく説明しています。

土地の成り立ちについて知る 

町おこしをするにはその地域の特性や長所を理解し、それを活かした取り組みを行うことが重要です。同時に、地域のことに関心を持ち地域のルーツを知ることは今の暮らしをよりよく見ることにもつながります。historicaでは、今後も人々の営みが続いていく場所の「これからの歴史」を届けています。

まとめ 

・限界集落とは、65歳以上の人口が地域の50%以上を占め、公共機関や病院、物流などが機能していない地域。
・限界集落が生まれる原因は、産業の衰退し働く場所が少ないことと、少子高齢化による生産人口の減少。
・限界集落では生活インフラの維持が難しく、災害リスクなどの問題もある。
・過疎化に直面している自治体では、それぞれ施策を打つことでその地域を守っている。

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