2021/11/24

【スギ花粉と日本の歴史】日本に杉が多すぎる理由

こんにちは。historicaのオカヤスです。僕たちは様々な町を取材して、その土地のことを発信していく活動をしています。行く先々で、いろいろな土地柄や歴史があり一様ではないところが面白い(読者の方々にも届いてくれ)ですが、一方でいつも同じように思うこともあります。そのひとつが、今回のテーマ「スギ多すぎ問題」です。なぜこんなにスギが植えられているのか、皆さんは疑問に思ったことはありませんか。
僕は花粉症がひどいので春先はhistoricaの活動は休止かな?と思っているくらいスギ花粉を警戒しているのですが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」という孫子の格言にあるようにスギについて理解を深め、百戦(?)に備えていきましょう。この記事では、取材を通じて分かったスギにまつわるお話を、historicaならではの内容でお届けします!それでは、花粉症の人もそうでない人もお付き合いよろしくお願いします。

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スギの木の特徴

岐阜県本巣市越波村にある長嶺の大杉

まずはスギの特徴についておさらいしておきましょう。スギは日本固有種で、本州の北端から屋久島まで分布します。 常緑針葉樹であるスギは、年間を通じて葉を落とす時期がなく針状の細長い葉が特徴です。 スギは、もともとはスギ科でしたが、近年のDNAを用いた植物の分類体系により、スギ科はヒノキ科に統合されたため、現在はヒノキ科スギ亜科スギ属となっていて、スギ属の植物はスギのみです。スギは2月から4月ごろにかけて、花粉を風に乗せて遠くまで飛ばします。
また、スギは非常に寿命が長く、屋久島の縄文杉は2000-7200年ほど生きていると推定されるそうです。先日、 historicaの取材で訪れた岐阜県本巣市の越波村の大杉も樹齢900年以上とされていましたが、まだまだ衰える様子は一切なく、たくましく立派な佇まいでした。

戦後の高度経済成長にスギの木を植えた

まっすぐ伸びるスギは電柱としても活躍した

日本では、1950年頃から始まる高度経済成長のなかで木材需要が増えたことで、成長が早く日本の自然環境に広く適応できるスギ・ヒノキの造林を推進されました。「もはや戦後ではない」という言葉に象徴されるイケイケの時代ですね。しかし、いくら成長が早いといっても木材として活用できる程度に成長するには40~50年かかるのが一般的。当時多く植えられた木は現在、木材として利用に適した時期を迎えていますが、木造家屋が減り木造の電柱はなくなった上に、スギの値段が下がったことなど、時代とともに市場で不利な商材になったため、伐採されることが少なくなってしまいました。
実際に、かつて林業で栄えた町を訪れた際に町の人から話を聞いたので、一例としてお話したいと思います。

静岡県浜松市水窪町の例

かつて「天竜材」で栄えた水窪町。スギの木は今も残る

先日、我々が訪れた静岡県浜松市にある水窪町という地域では、かつて町の就業者の80%が農林業に従事していました。特に林業は「天竜材」と呼ばれる国内でも良質な木材によって栄えており、まさに町の基幹産業でした。それが1965年頃から低迷し始め、高度経済成長が終わるの1973年頃には極端に衰退しました。その後、町は製造業で一時盛り返しましたが、それも今では町から失われています。林業は衰退しましたが、いまも植えられたスギの木は山の斜面にまっすぐと伸びています。

住まなくなった土地にスギの木を植えた

大河原集落のスギ林となっている場所も50年前には畑や民家があった。

また、岐阜県本巣市の大河原を取材した際に偶然出会った住人の方にお話しを伺ったところによると、住んでいた集落を集団で移住する決意をした際に「もうこの場所には戻らない」という思いで成長の早いスギを植えたそうです。

さらに詳しい内容はこちらの記事やYouTubeで公開しています。

おそらく、大河原以外にもこのような思いで宅地をスギ林に変えてしまった地域も多いのではないでしょうか。 林業の最盛期だったころの日本では、広葉樹林をスギ林に変えることで、将来も子孫がスギによる利益を享受できると考え、スギを植えることが多かったようです。 しかしながら、スギが木材として使えるようになるころには時代が変わっており、植えられたスギは木材としても使われないままになっています。現在日本の森林の約4割が人工林で、人工林の約4割がスギ林が占めます。

スギの木を防災の観点で見る

日本は天災の多い国です。2021年の夏の熱海市の伊豆山の土石流災害も記憶に新しいです。国土7割が山となっている地形の日本では山裾に開かれた住宅地などがある上、日本には全世界の1割以上を占める活火山が分布しているため地震も多く、防災への意識が欠かせません。防災の観点から、多くのスギの木を植えたことはどのような効果があるのか解説します。

スギの人工林は保水力が弱い

広葉樹林だった山をスギの林に変えることで山の保水力が弱くなり、 降った雨がそのまま川に流れやすくなります。広葉樹の林であれば、葉が落ち堆積することで土壌の上に腐葉土が作られます。腐葉土が長い年月にわたって山肌に堆積していくことで、水を貯める天然のダムを作ります。しかし、針葉樹であるスギの葉は落葉しても腐葉土にならないため、広葉樹林がスギに変わることで雨水が川に溢れ洪水や土砂災害を招くといわれています。

スギの人工林で地盤がゆるくなる

広葉樹林だった山をスギの林に変えることで地盤がゆるくなり、地滑りやがけ崩れが起きやすくなります。広葉樹は根を下方向に深く張るため、地盤を強化する働きがあります。一方で、スギの人工林は根が浅く、横方向に張るので地盤を強化する働きはなく、大雨や地震が起きた際に山肌が崩れるのを止める力がありません。

歴史を感じながら自然と調和する

いかがでしたでしょうか。先人たちは未来を考えてスギを植えてくれたということが分かりました。しかしながら、先が見えない時代のなかで、そのすべてがうまくいかないことも。ただ、国が一丸となって推進するようなエネルギーはすごいなと感じます。スギの現状を知り、林業のあり方や人間と自然の共存の重要性を考えてみるのはどうでしょうか。
スギの木も自然の一部。スギ花粉も然りということで、私たちはスギ花粉に感謝して (無理)調和していくべきなのかもしれません。花粉症に悩まされる時期もありますが、日本の歴史に思いを馳せながら自然と調和するライフスタイルを意識してみてはいかがでしょうか。
historicaを運営する我々NEUでは、天然素材のヒノキを使ったマグカップやコーヒードリッパーを提供しています。日本の森林の役割に思いを馳せながらコーヒータイムを楽しんでみるのもおすすめです。


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