2021/08/28

【廃村】美しい清流の流れる廃村 – 椿集落を取材 その2

※この記事は椿集落現地レポートの後編になります、前編を未読の方はそちらも併せてご覧ください

廃村となった今も元住民の故郷への想いが伺える記念碑

分校跡からしばらく進むと、この辺りから段々と建物や当時の生活を伺わせるようなロケーションが増えてきました。道端にあるお地蔵様にもここ数か月の間に誰かが訪れた形跡があり、廃村となった今なお、この場所を愛する方々が多くいることを実感しました。

道ばたの地蔵、数か月以内に人が訪れたような痕跡がある
廃屋は集落のあちこちで見られる

さらに進んでいくと、元住人の方が設置したと思われる記念碑がありました。碑によると、これを建立したのは最初にこの地に移住したと伝わる室町時代の豪族、中原氏の子孫にあたる方だと分かりました。確かに、村の入り口にあった人家分布図を見ても、この椿集落には中原姓が多かったのが分かります。

廃村となった後に建立された記念碑
祖先を偲ぶ石碑

また、祖先を偲ぶ碑も同じ場所に建立されており、そこには句が彫られていました。

はなれても 古里を恋ふ 夏山家

この場所は、かつての住民やその子孫の方々の、故郷を想う気持ちを随所に垣間見ることができ、こういう場所がかつてあったのだ、ということを100年後の人々にも伝えていくべきだと、改めて実感させられました。この碑の裏側には中原氏の祖先の歴史が刻まれており、この一族の変遷を断片的にも伺い知ることができました。

裏面には一族の歴史が刻まれている

分かれ道と、巨大な建物に遭遇

記念碑を後にし、しばらく行くと初めて分かれ道に遭遇しました。どちらが正解かは分からなかったのでどちらも行ってみることに、まずは向かって右側の道へ進んでみましたが、めぼしいものは特に見当たらず、保安林が続くのみでした。恐らく後に管理用として作られた道路なのかもしれません。

右側の道に進んだが特に何も見つけられなかった

来た道を戻り、向かって左側の道には、これまで見た中で一番規模の大きな建物がありました。何かの施設であることは間違いなさそうでしたが、ここも敷地内への立ち入りが禁止されており近づけなかったので、どういう用途で使用されていたかはわかりませんでした。村の入り口にあった人家分布図によると、この辺りに善林寺というお寺がある筈ですが、この建物がそれに当たるかは最後まで不明のままでした。

規模の大きな廃屋、何の施設かは分からない

蔵と民家、そして椿集落の終端へ

ここまでかなりの距離を歩きましたが、まだまだ道は続きます。後から見たらなんと往復で10km以上も歩いておりました。こんなに歩いたのは何年振りだろうか・・・。この集落には至る所に建物の基礎だったと思われる石垣が残っており、中にはそれなりに規模が大きく立派なものあります。この場所は石垣が好きな人にとっては楽園かもしれません。

集落の至る所で見られる石垣
かなり立派なものも見られる

石垣に見惚れながら歩いていると、大きな蔵らしき建物と民家が見えてきました。蔵はだいぶ崩壊が進んでおり、危険そうなので十分注意しながら辺りを観察していると、なんと野生の鹿が飛び出してきました!急な出来事だったので心臓が止まりそうになりましたが、これほど近くで野生の鹿に遭遇したことはなかったので、良い経験となりました。もちろん一瞬の出来事なので写真などは撮影できず・・・。

蔵を発見
「水」の文字は防火の祈りを込めたお呪い

蔵にある「水」の文字は防火の祈りを込めたお呪いのようなものですね。昔は火災が起きたら終わりだったので、民間レベルでこういうお呪いが浸透していたんですね。他にも水を連想させる文字を使用する場合もあるようで、「龍」や「亀」などバリエーションがいろいろとあるようです。お城の屋根に付いている鯱なんかも、同じような意味で取り付けられています。

蔵のすぐ横には民家もあり、標識から中原姓の方が住んでいたと思われます。民家はすでに放棄されているように見え、中も少し覗いてみましたが、物が散乱している状態でした。この建物が、椿集落で目にした最後の建物で、その先もしばらく歩いてみましたが、管理用の歩道が続くばかりで、恐らくこの辺りが村の終端だと思われます。

蔵の横の廃屋には中原という標識がある

総括、この場所を訪れてみた感想と廃村に対する考え方

今回訪れたこの椿集落は、50年前に無人の地になったとは思えないほど、未だによく管理されており、離れた後も故郷を想う方々の気持ちを集落全体で見て取ることができました。こういった廃村というのは、往々にして無理やりオカルト化される傾向にありますが、かつてここで生活していた人々の営み、ここで刻まれた歴史の尊さを想えば、まったく違った見方ができると思います。

我々historicaは今後もこういった歴史に埋もれた場所を再発見し、発信し続けます。また次回のコラムでお会いしましょう!

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