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椿集落の歴史 – 廃村となった後も語り継がれる美しい川の流れ
今回は岐阜県山県市にある廃村、椿集落の歴史を見ていきましょう。椿集落には2021年の8月に訪れました。廃村となった場所は基本的には朽ちるままに放棄されていることが多いのですが、この場所に関しては、元住民の方々が今なお思いを馳せている様子が、集落の至るところに建立された記念碑などの碑文から読み取ることができました。そんな椿集落の歴史を紹介していきます。また、取材の様子は別の記事で紹介していますので、そちらも併せてチェックしてみてください。
目次
椿集落の歴史とその成り立ちについて
椿集落の成り立ちについては、集落内に建立されている碑から読み取ることができる。ただし、これはあくまでもある一族に伝わる伝承の範疇であり、信ぴょう性については低いと思われる。それを踏まえて、まずは碑文の内容を見ていくこととする。
碑文の内容から椿集落の成り立ちを読み解く
本家中原萬四郎、分家初代中原半四郎、三代目文蔵の娘、利世(嘉永元年十二月十三日)に初代治良兵衛(慶応三年三月二日寂)を柿野村より迎え分家した。二代目 中原 柱助・文 三代目 中原 荒助・くま 四代目 中原 文吾・かん 五代目 中原 静一・千代子 六代目 中原 悟・美恵子・・・真也・愛と続く。 平成二十六年十一月吉日建立 中原 悟
前半部分は、この集落の元住人であった中原氏が、この場所の成り立ちと自らの一族のルーツを記したものになる。碑文によると、文明時代(1469年~1487年)の豪族であった中原氏の居城である見延城が、何らかの理由で落城し、この椿まで落ち延びたことが確認できる。確かにこの時期は応仁の乱の真っ只中であり、中原氏の居城があった美濃国にも戦火が及んでいるため、背景としては自然な流れと言える。「見延」や「一色」という地名についても、現在の岐阜県本巣に存在しており、椿集落との位置関係から見ても、落城後に背後の山中に落ち延びたのだという想像ができる。
近江国の豪族、中原氏について
この中原氏という豪族についてはあまり情報がないが、元を辿れば崇峻天皇の血筋にあたるらしい。ただし自らの一族の出自を権威ある血筋に求めるのは、古今東西共通した傾向であり、その信ぴょう性については疑問が残る。この中原氏が見延城を落ち延びて、椿の地に辿り着いた後のことは何も分かっていないが、集落の人家分布を見ると、この地にて中原姓が多いのは確かである。
椿集落の学びの場、椿学校について
椿集落ではもともと、鸚笑義校という寺子屋で教育が行われていたが、1873年に益進義校の支校として椿支校が発足、1883年には椿学校として独立している。椿学校に関してはその後も紆余曲折ありながら、最終的には1971年に住民の集団移住に伴い廃校となった。現在かつて学校があった場所には記念碑と朽ちた遊具が残されているのみで、校舎自体は現存していない。下記は椿学校の年表である。
1873年 | 益進義校の支校として椿支校が発足 |
1883年1月6日 | 椿学校として独立する |
1886年 | 椿簡易小学校に改称する |
1892年 | 椿尋常小学校に改称する |
1897年 | 周辺の村との合併により北武芸村が発足、それに伴い笹賀尋常小学校に統合され、笹賀尋常小学校椿分教場となる |
1919年 4月 | 北武芸尋常小学校椿分教場に改称 |
1922年 | 校舎を新築する |
1941年 4月1日 | 北武芸国民学校分教場に改称 |
1955年 4月1日 | 周辺の村との合併により美山村が発足、合併に伴い美山村立北武芸小学校椿分校に改称 |
1961年2月 | 校舎の改築を行う |
1964年4月1日 | 町制施行により美山町が発足、それに伴い美山町立北武芸小学校椿分校に改称 |
1971年12月 | 椿地区が行政による集団移住の対象により廃村、それに伴い廃校となる |
椿集落が廃村となった理由と時期について
周知の通り椿集落は約50年前の1971年12月に廃村なっているが、その理由は上記でも触れたように、集落再編事業に伴った行政による集団移住である。当時、過疎化が進んでいた椿集落は集団移住の対象となったが、一応は住民への意向調査も行われたようである。大半の住民が移住に対して否定的であったが、結果的には集団移住が決定し廃村となっている。現在でも椿集落から下った辺りの団地にはかつての住民が居住しているという。
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