2022/01/20

日本で一番大きな村にある小さな集落 – 果無集落を取材

どうも、historicaの安藤です。十津川村と言えば日本で一番面積の大きい村として有名かと思いますが、そんな十津川村にある果無集落の存在はご存じでしょうか?この集落は世界遺産である熊野古道小辺路の途上にあることで一躍有名となった集落で、別名「天空の郷」とも呼ばれています。今回はそんな果無集落を取材してきましたので、その模様をお伝えしていきたいと思います。

果無集落へのアクセス

果無集落は小辺路の途上に位置していますが、過酷な小辺路を歩いて行く必要はなく、現地までは車で直接アクセスできるようになっています。公共の交通機関を使う場合は、電車は通っておらずバスのみとなります。

車でアクセスする場合

今回、取材班は車で訪れましたが、集落の近くには駐車場も設けられていたので比較的アクセスはし易かったです。ただし奈良県の南部は高速道路が通っていないので、どの方面からアクセスするにせよ、長時間山道を走り続ける必要があります。

自然豊かな十津川の風景

バスでアクセスする場合

十津川村に電車は通っていないため、公共の交通機関を使う場合はバスを利用する必要があります。果無集落の目の前にもバス停が設置されていますが、かなり本数が少ないようなので、予定を組む際は注意してください。詳しい情報は十津川村の公式ホームページで確認できますので、そちらを参照してください。

集落の目の前にバス停が設置されている

本日の目的地、果無集落へ向かう

今回我々は三重県熊野市まで高速で移動し、そこから下道で十津川村へ向かうことにしました。十津川村には電車も高速道路も通っていないため、さながら陸の孤島のような印象を受けます。アクセスのし難さで考えると、この奈良県南部というのは国内でも有数の秘境なのでは?とも思います。

片道3時間ほど掛けてようやく十津川村へ入り、目的の果無集落へ向かいます。国道168号をひたすら北上し、国道425号と交差する手前で山道へ入ります。その山道をしばらく登っていくと果無集落へと至ります。

観光客を迎えるゲートがあった
果無集落へ向かう道のり、ほんのり紅葉していた

めん滝にてしばし休憩、自然の中で癒される

山道に入ってしばらく進むと、めん滝と呼ばれる滝を発見。近くまで行って見学することができそうだったので、休憩がてら散策してみることに。辺りは水の落ちる轟音が鳴り響き、なかなかの迫力がありました。滝の近くにはベンチも設置されていたりと、割と見学しやすいようにはなっていましたが、足元は悪いので訪れる際はご注意ください。

間近で見るとなかなかの迫力のめん滝
滝を見ながら癒される

果無集落へ到着、”天空の郷”の異名に相応しい景色

滝から少し進むと目的の果無集落へ到着しました。集落の手前には駐車場も設けられており、公衆トイレまで設置されています。ただし、駐車場は4台ほどしかないので、混み合うとあっという間に埋まってしまうでしょう。駐車場の場所から50mほど進むと集落が見えてきます。

駐車可能な台数は少ないので注意
果無山脈を見渡す天空の郷、果無集落

例の有名な石碑と小辺路

果無集落と言えばこの石碑が有名ですよね。熊野古道が世界遺産に登録された記念に建立されたのでしょう。我々も例に倣ってお決まりのアングルで記念撮影。そして集落を通っているこの歩道こそが、世界遺産熊野古道の小辺路です。集落の住人からすれば、いつも普通に使ってた道がある日いきなり世界遺産になったわけですから良い迷惑かもしれませんね。我々が訪れた日にも何組か小辺路を通る団体とすれ違いました。難所と言われる小辺路の途上にあるこの長閑な集落は、古くから旅人にとって憩いの場だったのでしょう。

とりあえずお決まりの画角で撮影

昔ながらの古民家と住民の遊び心が訪れる人々を楽しませる

集落には今でも住民の方が暮らしている民家が数軒あり、そのうちの一軒は観光客向けに縁側を開放してくれています。屋根につるされた干し柿や藁で編まれた草履や笠など、古き良き日本の風情を詰め込んだような素敵な古民家です。しかし残念ながら現在はコロナウイルスの関係で縁側の利用は中止されていましたが、平時は小辺路に挑む人々の休憩所として親しまれている場所なんだとか。

その他にも住民の方が設置したという水桶は花が一凛添えられており、これまた風流を感じさせてくれます。集落の随所に訪れる人を愉しませてくれる住民の遊び心が添えられている素敵な場所でした。

住民の方が設置したという水場
住民の方の繊細な遊び心が随所に垣間見える
集落の雰囲気を醸成する小物もお洒落
軒下に吊るされた干し柿

ここでしか見られない景色、実際に訪れる価値あり

集落は果無山脈を見渡す尾根に位置することから「天空の郷」とも呼ばれ、実際にこの場所に訪れてみれば、なるほどその異名も大げさではないなと感じます。どこまでも続く山々と集落の中央を貫く小辺路、古き良き日本の風景を色濃く残した集落は日本国内でも有数の景観を誇っています。平安時代から既に人々の往来があったというこの古道の集落を、遠路はるばる訪れる価値は確かにあると感じました。

小辺路を歩く人々の休憩所となっている民家
小さな集落だが訪れる人々の心を癒す風景
集落の中央を貫く世界遺産、小辺路

「果無」の由来について

果無(はてなし)という印象的な名の由来はどこにあるのか、気になったので調べてみましたが、どうやらその由来にはいくつかの説があるようです。

1つ目の説としては、遥か遠くまで続く山脈を見渡すその様に果てが無いから「果無」という説。実際、江戸時代の文献にもそのような記述があるそうです。

2つ目は1331年に鎌倉幕府を倒幕するため乱を起こした後醍醐天皇の息子である護良親王が、果無の辺りまで落ち延びた際に、逃げても逃げても果てが無いということでその名が付いたという説。

3つ目の説は「一本だたら」という妖怪がおり、普段は人を襲うことのないその妖怪が「果ての20日」、すなわち12月20日にだけ人を襲うことから、その日には人が寄り付かなくなる。故に「果ての20日には人が無し」ということで果無となったという説があります。

名前の由来にこれだけしっかりとした説があるのも珍しい気がしますが、個人的には1つ目の説が一番信ぴょう性があるように思えます。皆さんはいかがでしょうか?どれを信じるかはあなた次第です。

集落から見渡す果無山脈はどこまでも続いているようだ
天空の郷と田の組み合わせはどこか非日常を感じる

果無集落を後にし、次の目的地へ

集落自体は1時間もあれば見て周れる小規模な場所ですので、我々も午前中には取材を終えて次の目的地へ向かうことにしました。再び国道168号を北上し、途中目に付いたいくつかの施設に立ち寄ってみました。

道の駅 十津川郷に立ち寄り足湯を堪能

道中、道の駅があったので休憩がてら寄っていくことに。道の駅には人を寄せ付ける不思議な魅力があると感じるのは私だけでしょうか。見つけたらついつい用もないのに立ち寄ってしまいます。この十津川郷では地元の特産品が販売されていたり、観光案内所も設置されていました。その他にも蕎麦屋や、喫茶コーナーなどもあり設備は充実しています。

外には出店や足湯があり、取材班もせっかくなので満喫させてもらうことに。出店では十津川村の特産品でもある「串こんにゃく」が売られていました。こんにゃくを頬張りながら足湯でほっと一息、まさに至福です。

道の駅 十津川郷
誰でも自由に浸かれる足湯
名物の串こんにゃく

「蕎麦甘味処 風庵」にて本格的な蕎麦をいただく

道の駅を後にし、しばらく走ると何とも風情な蕎麦屋さんを発見しました。せっかくなのでここで遅めの昼食を頂くことに。この「蕎麦甘味処 風庵」では本格的な蕎麦が頂けるお店で、店内にはテラス席もあり、せっかくなのでそこを利用させてもらいました。大自然に囲まれながら美味しい蕎麦を頂くというのもまた粋ですね。

趣のある佇まいのお店
大自然に囲まれながらテラス席でもお食事が楽しめる
豪華なセットを注文、本格的な蕎麦を頂く
甘味もしっかり頂く

十津川いちの観光名所、谷瀬の吊り橋

蕎麦屋からほど近い場所に次の目的地である「谷瀬の吊り橋」があります。このつり橋が設置された当時は日本一長い歩道用つり橋として名を馳せました(因みに現在の1位は茨城県の竜神大吊橋)。

このつり橋が設置される以前は、渡河するたびに谷を降りてから丸太橋を渡っていたといいます。しかし丸太橋は洪水が起こるたびに流されるので、当時の谷瀬周辺の住民が資金を出し合い、このつり橋を完成させたのだとか。教師の初任給が7,800円だった時代に、一戸当たり20~30万円もの大金を出したというのだから、このつり橋の設置がどれほど住民達の悲願であったかが伺えます。

せっかく来たからには渡らない選択肢はないということで、我々も元日本一のつり橋を体験してみることに。想像以上に揺れるうえに強風が吹き荒れるので、高所が苦手な人には少々刺激が強いかもしれません。つり橋の下を覗いてみるとキャンプ場がありました。

高所恐怖症の人にはちと辛いレベル
ここにも串こんにゃくが

まとめ

今回は日本一大きな村の中にある素朴な集落果無を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?まだ日本にこのような集落での暮らしが続いているという事実に関心した一方、今後もこのような集落を維持していけるような環境作りは必須だとも感じました。アクセスのし難さが玉に瑕ではありますが、十津川村自体も自然豊かで実際に訪れる価値のある場所だと感じました。この記事を見て気になった方は是非訪れてみてください。

それではまた次回の記事でお会いしましょう!

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